【賃料増減額確認請求訴訟の確定判決の既判力はどの時点で生じるか】

RETIOで見つけた判例です。
http://www.retio.or.jp/info/pdf/98/98-140.pdf
ちなみに,賃料増減額に関する訴訟は調停前置であり,前置を怠って訴訟提起をした場合,裁判所は不適当な場合を除いて,調停に付さなければならないらしいです(民事調停法24条の2第1項・第2項)。民事調停法なんて久しぶりに開いた…。勉強不足ですね。

裁判所|民事調停をご存じですか



最判H26.9.25】【時点説】【賃料増減額確認請求訴訟の確定判決の既判力はどの時点で生じるか】
 借地借家法32条1項所定の賃料増減請求権は形成権であり,その要件を満たす権利の行使がされると当然に効果が生ずるが,その効果は,将来に向かって,増減請求の範囲内かつ客観的に相当な額について生ずるものである(最高裁昭和30年(オ)第460号同32年9月3日第三小法廷判決・民集11巻9号1467頁等参照)。
 また,この効果は,賃料増減請求があって初めて生ずるものであるから,賃料増減請求により増減された賃料額の確認を求める訴訟(以下「賃料増減額確認請求訴訟」という。)の係属中に賃料増減を相当とする事由が生じたとしても,新たな賃料増減請求がされない限り,上記事由に基づく賃料の増減が生ずることはない最高裁昭和43年(オ)第1270号同44年4月15日第三小法廷判決・裁判集民事95号97頁等参照)。さらに,賃料増減額確認請求訴訟においては,その前提である賃料増減請求の当否及び相当賃料額について審理判断がされることとなり,これらを審理判断するに当たっては,賃貸借契約の当事者が現実に合意した賃料のうち直近のもの(直近の賃料の変動が賃料増減請求による場合にはそれによる賃料)を基にして,その合意等がされた日から当該賃料増減額確認請求訴訟に係る賃料増減請求の日までの間の経済事情の変動等を総合的に考慮すべきものである(最高裁平成18年(受)第192号同20年2月29日第二小法廷判決・裁判集民事227号383頁参照)。
 したがって,賃料増減額確認請求訴訟においては,その前提である賃料増減請求の効果が生ずる時点より後の事情は,新たな賃料増減請求がされるといった特段の事情のない限り,直接的には結論に影響する余地はないものといえる。
 また,賃貸借契約は継続的な法律関係であり,賃料増減請求により増減された時点の賃料が法的に確定されれば,その後新たな賃料増減請求がされるなどの特段の事情がない限り,当該賃料の支払につき任意の履行が期待されるのが通常であるといえるから,上記の確定により,当事者間における賃料に係る紛争の直接かつ抜本的解決が図られるものといえる。そうすると,賃料増減額確認請求訴訟の請求の趣旨において,通常,特定の時点からの賃料額の確認を求めるものとされているのは,その前提である賃料増減請求の効果が生じたとする時点を特定する趣旨に止まると解され,終期が示されていないにもかかわらず,特定の期間の賃料額の確認を求める趣旨と解すべき必然性は認め難い。
 以上の事情に照らせば,賃料増減額確認請求訴訟の確定判決の既判力は,原告が特定の期間の賃料額について確認を求めていると認められる特段の事情のない限り,前提である賃料増減請求の効果が生じた時点の賃料額に係る判断について生ずると解するのが相当である。


賃料増減額確認請求訴訟の訴訟物については,期間説と時点説の対立があり,本判決は,時点説を採用した初めての判断らしいです。