【受信機設置者は放送受信契約締結義務を負うか】

判例解説Watchで見た裁判例です
http://lex.lawlibrary.jp/commentary/pdf/z18817009-00-031111342_tkc.pdf

学説(訓示規定説)と裁判例がかなり対立している印象を抱きました。
感情論としても,ほとんどNHKを視ない人が,年間に24,770円も支払うのは理不尽な気がします。
NHK受信料の窓口-放送受信料 新規契約のお手続き

また,BS放送やWOWOWのように,スクランブルをかけて,受信契約をしないとNHKを受信できないようにすることが技術上可能になっているので,放送法64条1項も改正の余地があるのではないかと思います。


以下,裁判例です。

【法的義務肯定説】【東京地判H27.10.29】 放送法は,64条1項本文において,「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」と定め,同条2項には,原告が放送受信契約を締結した受信機設置者から受信料を徴収することを予定した規定を置いている。
 そして,原告(NHK)は,あまねく日本全国において放送できるように豊かで,かつ,良い放送番組による国内基幹放送を行うとともに,放送及びその受信の進歩発達に必要な業務等を行うことを目的として設立されたものであり,その事業に高い公共性が認められ,一方で,国や広告主等の影響をできるだけ避けて自律的に番組編集を行うことができるようにする必要があることから,放送法は,原告(NHK)に対して営利目的の業務及び広告放送を禁止し,その代わりに財政的基礎を確保する方法として放送受信契約及び受信料の制度を採用して,広く国民に公平に負担を求めることにしたものと解することができる。
 このような受信料の性質に,放送法の規定の文言,受信料が継続的に支払われるべき金員であることからすると,放送法64条1項の規定は,受信機設置者に放送受信契約を締結する義務を強制的に課したものと解するのが相当である。この点は,放送法制定時における国会での政府委員答弁においても,①今後,民間の放送事業者が放送事業に参入して来ることになるが,原告は,利益の有無にかかわらず,あまねく日本全国において受信できるようにしなければならない使命を負っているのであるから,受信料を強制的に徴収することが必要になる旨,②受信料の価格及びその使い方に愼重を必要とすることになるため,受信料を法律でもって定め,原告の毎事業年度の収支予算等は国会の承認事項とし,さらに会計検査院が事後的に審査することにした旨が説明されていることからもうかがわれるところであり,このような立法当時における放送受信契約の締結義務の規定の趣旨は,前記で述べた現行の放送法においても変わるところはないというべきである。
 したがって,「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」と規定する放送法64条1項は,受信機設置者に対して,原告(NHK)と放送受信契約を締結すべき私法上の義務を課したものと解するのが相当である。