【営業上の利益としての眺望利益が法的保護の対象となる場合とは】
更新かなりさぼっていました。
今回もRETIOで紹介されていた裁判例です。
不法行為における権利侵害要件について勉強したのがはるか昔なので、いい復習になりました。国立マンション事件とか久々に復習しようと思いました。
【規範】【東京高判H26.10.16】
【営業上の利益としての眺望利益が法的保護の対象となる場合とは】
建物所有者又は占有者の有する営業上の利益としての眺望利益は、当該建物自体について有する排他的、独占的な支配と同じ意味で支配、享受することができる利益ではなく、当該建物と眺望の対象との間に遮るものが存在しないという客観的状況や、他者が排他的、独占的に管理し、又は公共のために利用し得る空間の利用態様によって事実上享受し得るにとどまるもので、その内容は、周辺における客観的状況の変化によっておのずから変容ないし制約を受ける性質のものである。
したがって、その眺望利益は常に法的保護の対象となるものでなく、特定の場所がその場所よりの眺望の点で格別の価値を持ち、当該建物の所有者等において当該眺望の享受が社会通念上独立した利益として認められる場合においてのみ、法的保護の対象となるものと解される。
【あてはめ】
本件ビルの1階店舗内部からは、A通り沿いの往来を望むことができるが、この眺望の対象となる街並みが高い文化的価値や歴史的価値を有するなど、格別の価値を有する事情はうかがわれない。すると、本件ビル1階店舗からの眺望も、その周辺の客観的状況の変動により変容ないし制約を受けることはXらにおいて予想されるところであり、これを受忍すべきものというべきである。したがって、Xが主張する営業上の眺望利益は、これを享受することが社会通念上独立した利益として承認されるだけの実質的な意義を有するものと認めることはできないから、法的保護の対象となるものと認められない。
【爆発物取締罰則1条あるいは3条にいう「治安妨害目的」や「身体財産加害目的」の判断基準】
2月28日分です。
今日は爆発物取締罰則について調べていたので、その関係の裁判例です。
条文がカタカナで読みにくかったので、商法とともに平仮名の口語体に変更してほしいと思いました。
【規範】【東京高判H21.11.25】抜粋
【爆発物取締罰則1条あるいは3条にいう「治安妨害目的」や「身体財産加害目的」の判断基準】
爆発物取締罰則1条あるいは3条にいう「治安妨害目的」や「身体財産加害目的」の存否を判断する際,その基礎事実の一つである爆発物の爆発力,すなわちその危険性については,同条の罪が抽象的危険犯であることを考えると,純客観的に見るべきものではなく,その使用あるいは所持の時点において,一般人に認識可能だった事情及び一般人は認識し得なかったが行為者本人が特に認識していた事情を基礎として,一般人がどのようにその爆発力,危険性を認識するかという点から規範的に捉えるべきものである。
【具体的検討】【東京高判H21.11.25】抜粋
多数回にわたり爆弾実験を繰り返した上で,その爆発力を認識し,540キログラムもの手製アンホ爆薬を入れて製造されたローリータンク爆弾は,客観的に殉爆性が乏しいものであったとしても,一般人の立場から見れば,相当の威力ある爆発に至る危険性があると捉えるものである。
よって、本件ローリータンク事件について,被告人には治安妨害目的があったといえる。
目的認定の話ですが、実行行為性における具体的危険説を彷彿とさせる内容であると感じました。
【土地区画整理事業の施行地区内の土地について、売買当時、賦課金を課される可能性が存在していたことをもって、民法570条にいう瑕疵があるといえるか】
2月27日分です。
さすがに毎日仕事と関係のない勉強することがきつくなってきたけど、いつか仕事につながると信じて、(できる限り)毎日継続して行こうと思う。
今日は
一般財団法人 不動産適正取引推進機構 | RETIO判例検索システム
から探した判例。
処分性検討における仕組み解釈を彷彿とさせる内容だった。
【規範】【フッ素瑕疵事件上告審/最判H22.6.1】
売買契約の当事者間において目的物がどのような品質・性能を有することが予定されていたかについては、
●売買契約締結当時の取引概念を斟酌して判断すべき
である。
【具体的検討】【最判H25.3.22】
【土地区画整理事業の施行地区内の土地について、売買当時、賦課金を課される可能性が存在していたことをもって、民法570条にいう瑕疵があるといえるか】
B組合が組合員に賦課金を課する旨決議するに至ったのは,保留地の分譲が芳しくなかったためであるところ,本件各売買の当時は,保留地の分譲はまだ開始されていなかったのであり,B組合において組合員に賦課金を課することが具体的に予定されていたことは全くうかがわれない。そうすると,上記決議が本件各売買から数年も経過した後にされたことも併せ考慮すると,本件各売買の当時においては,賦課金を課される可能性が具体性を帯びていたとはいえず,その可能性は飽くまで一般的・抽象的なものにとどまっていたことは明らかである。
そして,土地区画整理法の規定によれば,土地区画整理組合が施行する土地区画整理事業の施行地区内の土地について所有権を取得した者は,全てその組合の組合員とされるところ(同法25条1項),土地区画整理組合は,その事業に要する経費に充てるため,組合員に賦課金を課することができるとされているのであって(同法40条1項),上記土地の売買においては,買主が売買後に土地区画整理組合から賦課金を課される一般的・抽象的可能性は,常に存在しているものである。
したがって,本件各売買の当時,被上告人らが賦課金を課される可能性が存在していたことをもって,本件各土地が本件各売買において予定されていた品質・性能を欠いていたということはできず,本件各土地に民法570条にいう瑕疵があるということはできない。
【宅建業法64条の9により保証協会に納付された分担金の返還請求権について被転付適格があるか】
2月25日分です。
先日、宅建業法について勉強する機会があったので、宅建業法関連の判例をLEX/DBで調べていたら見つけました。民事執行法及び宅建士の業務についての理解が進みました。
【前提】
被転付債権は執行債権と即時に決済できる必要があり、即時決済可能性のない債権は、民事執行法159条1項にいう券面額を欠き被転付適格を有しない。
【宅建業法64条の9により保証協会に納付された分担金の返還請求権について被転付適格があるか】【東京高判H26.4.24】
宅建業者の保証協会に対する分担金返還請求権は、宅建業者が保証協会に分担金を納付した時に、納付した額に相当する金額の債権として発生し、ただその弁済期が不確定期限とされているにすぎない。
そのため、分担金返還請求権は転付命令の発令時に現に存在する債権であり、その金額も確定しているといえるから、券面額を有する債権であるということができる。